普通の会社員家庭でも資産を育てられるのか
「資産形成ができるのは、もともと収入が高い人だけでは?」
「子どもがいて、住宅費も高いのに、投資に回す余裕なんてない」
「もっと早く始めていればよかった」
アメリカで生活していると、家賃や住宅ローン、保険、医療費、教育費、車の維持費など、多くの支出があります。特に子育て中の会社員家庭では、毎月の生活を回すだけで精いっぱいだと感じることもあるでしょう。
それでも、普通の会社員家庭が資産を育てることは可能です。ただし、短期間で大きく儲ける方法を探すのではなく、毎月の収入の一部を「将来の資産へ変える仕組み」を作る必要があります。
資産を育てるために、最初から大金は必要ない
資産形成という言葉から、何十万ドルもの投資資金を想像するかもしれません。しかし、資産形成の出発点は、まとまった資金ではありません。毎月の収入の一部を、使ってなくなるお金ではなく、将来残るお金へ変えることです。
たとえば、給与から401(k)へ自動的に拠出する、給料日にSavings Accountへ自動送金する、証券口座で毎月一定額を積み立てるといった方法です。金額が小さくても、継続することで元本が積み上がります。
さらに、運用で得た利益を再投資すると、その利益が次の利益を生む可能性があります。これは複利と呼ばれる仕組みです。もちろん、投資のリターンは保証されておらず、資産価値が下がることもあります。
それでも、「大きなお金ができたら始める」のではなく、小さな金額から継続することには意味があります。
会社員だから使える仕組みがある
会社員には、給与から自動的に積み立てられるリタイアメントプランが用意されていることがあります。代表的なものが401(k)です。勤務先によっては、本人の拠出額に応じてEmployer Matchが提供される場合もあります。
Employer Matchの条件は会社によって異なるため、まず確認したい項目は次のとおりです。
- 自分が現在何%拠出しているか
- 会社のMatchがあるか
- Matchを最大限受け取るために必要な拠出率
- 現在どの商品へ投資されているか
- 手数料はいくらか
- 退職した場合の取り扱い
2026年の401(k)などの従業員拠出上限は、原則2万4,500ドルです。50歳以上には追加拠出枠があり、60歳から63歳には別の上限が適用される場合があります。
ただし、上限まで拠出できなければ意味がない、ということではありません。最初は勤務先のMatchを受け取れる水準を一つの目安とし、その後、昇給や支出の減少に合わせて拠出率を少しずつ上げる方法もあります。
資産形成を左右するのは、年収だけではない
年収が高いほど、資産形成に回せる金額を増やしやすいのは事実です。しかし、年収だけで将来の資産額が決まるわけではありません。重要なのは次の4つです。
- 収入:給与、副業収入、事業収入、不動産収入など、家庭に入ってくるお金
- 貯蓄率:収入のうち、どの程度を将来のために残しているか
- 運用期間:何年間、資産を運用できるか
- 大きな失敗を避けること:過剰な借入、詐欺的な投資、集中投資、生活資金まで投資することなどを避ける
年収が高くても、収入が増えるたびに生活費が同じように増えれば、資産は残りにくくなります。反対に、平均的な収入であっても、毎月一定額を長期間積み立て、収入が増えたときに積立額も増やしていけば、資産は少しずつ育っていきます。
「残ったら貯める」では資産が増えにくい
多くの家庭で起こりやすいのが、月末に残ったお金を貯めようとする方法です。ところが、口座にお金があれば、外食、買い物、子どもの予定、急な出費などに使われやすくなります。
そこで役立つのが、先取りによる自動化です。給料が入ったら、最初に次の口座へお金を移します。
- 緊急資金
- 401(k)
- IRAまたは証券口座
- 住宅購入資金
- 教育資金
- その他の目標別口座
残ったお金で生活する仕組みにすると、「毎月頑張って判断する」必要が減ります。資産形成では、意思の強さよりも、仕組みのほうが頼りになります。実際に一つの家庭がこの積み上げをどう進めているかは、Project $1M™ で記録として公開しています。
月500ドルでも意味はある
例として、毎月500ドルを20年間積み立てるとします。運用益を考えなくても、積み立てた元本は12万ドルです。毎月1,000ドルなら、元本だけで24万ドルになります。ここに運用による増減が加わります。
実際のリターンは市場環境、投資対象、手数料、税金などによって変わり、一定ではありません。それでも、毎月の積立額だけを見ると小さく感じる金額が、長期間では大きな元本になることが分かります。
最初から月1,000ドルが難しければ、月100ドルや月200ドルからでも構いません。重要なのは、今できる金額で始め、家計に余裕ができたときに金額を増やすことです。
昇給したときが、資産形成を加速させる機会
生活費を大幅に削り続ける方法には限界があります。共働き家庭が資産形成を加速させるには、支出管理だけでなく、収入が増えたときの使い方が重要です。
たとえば、年収が上がったときに、増えた手取り額の半分を積立に回します。
- 月の手取りが300ドル増えた
- 150ドルは生活の充実に使う
- 150ドルは401(k)や投資口座へ追加する
この方法なら、生活を少し豊かにしながら、資産形成も前進させられます。ボーナスやTax Refundについても、すべてを使うか、すべてを貯めるかの二択ではありません。一部を楽しみに使い、一部を負債返済や投資に回すルールを決めておくと続けやすくなります。
投資では「一つに賭けない」
投資を始めると、急成長している株や話題の商品に集中したくなることがあります。しかし、一つの企業、一つの業界、一つの資産だけに大きく依存すると、その価値が下がったときに家庭の資産全体が大きな影響を受けます。
複数の資産や投資対象へ分散することは、投資リスクを管理する基本的な考え方の一つです。米国証券取引委員会のInvestor.govも、分散投資を「一つのかごにすべての卵を入れない」考え方として説明しています。ただし、分散しても損失を完全に防げるわけではありません。
どのような配分が適切かは、使う時期、年齢、収入の安定性、損失への耐性などによって異なります。
余裕が少ないからこそ、順番が大切
資産形成は、「株を買うこと」だけではありません。次のような順番で土台を作ることが重要です。
- 毎月の家計を黒字にする
- 緊急資金を準備する
- 高金利の負債を確認する
- 勤務先の福利厚生を把握する
- 401(k)などの積立を自動化する
- 住宅、教育、老後などの目標を整理する
- 余力に応じて投資額を増やす
- 必要に応じて不動産や事業なども検討する
家庭によって、最適な順番は少しずつ異なります。しかし、「何となく投資を始める」よりも、家計の土台を整えてから進むほうが、途中でやめにくくなります。
資産形成は、一度の大きな決断ではなく、小さな決断の積み重ね
子育て中の家庭が、一夜で大きな資産を築くことは現実的ではありません。けれども、次のような行動はできます。
- 401(k)の拠出率を1%上げる
- 毎月100ドルの自動積立を始める
- Employer Matchの条件を確認する
- 使っていないサブスクリプションを解約する
- ボーナスの一部を投資へ回す
- 年に一度、純資産を確認する
- 昇給のたびに積立額を増やす
これらは、一つひとつを見ると小さな行動です。しかし、それを何年も続けることで、家計の中に資産が残る仕組みが育っていきます。
資産形成に必要なのは、「特別な家庭になること」ではありません。今の収入と生活の中で、将来へ回すお金を少しずつ作ることです。
普通の会社員家庭でも、資産は育てられます。その第一歩は、他人の資産額と比べることではなく、今の自分たちの数字を知ることです。
未来資産ラボでは、普通の共働き家庭がアメリカで資産を動かしていく過程を、Project $1M™ として実際に記録しています。何を選び、何を選ばなかったか。うまくいかなかったことも含めて公開しています。
※この記事は一般的な教育・情報提供を目的としたものであり、個別の投資・税務・法律上の助言ではありません。内容は執筆時点の情報に基づいており、制度や税制は変更される可能性があります。不動産の収益性や適切な資金配分は、地域、市場、借入条件、家庭の状況によって異なります。ご自身の状況に当てはめる際は、必要に応じて資格を持つ専門家へご相談ください。
