アメリカで資産形成を始める前に整理したい5つの項目
アメリカで暮らしていると、401(k)、IRA、株式投資、不動産投資、住宅購入、子どもの大学資金など、さまざまなお金の情報が入ってきます。
「401(k)には、いくら入れたらいい?」
「投資を始めたほうがいいの?」
「家を買うのと、不動産投資をするのはどちらが先?」
このように考えているうちに、何から手をつければよいのか分からなくなってしまう人も少なくありません。
しかし、資産形成を始めるときに、いきなり投資商品を選ぶ必要はありません。まず必要なのは、現在の家計を整理し、自分たちがどこに向かいたいのかを明確にすることです。
この記事では、アメリカで資産形成を始める前に整理しておきたい5つの項目を紹介します。
1.毎月のお金の流れ
最初に確認したいのは、毎月いくら入ってきて、いくら出ていっているかです。
資産形成というと、投資の利回りや銘柄選びが注目されがちです。しかし、投資に回せるお金は、毎月の収入から生活費や固定費を差し引いた残りから生まれます。
まずは、過去3か月程度の銀行口座とクレジットカードの明細を見て、支出を次の3つに分けてみましょう。
生活に欠かせない支出
- 家賃または住宅ローン
- 食費
- 光熱費
- 保険料
- 車の支払い
- 保育料や学費
- 最低限の交通費
調整できる支出
- 外食
- サブスクリプション
- 衣服
- 娯楽
- 習い事
- 旅行
- ネットショッピング
将来のための支出
- 貯金
- 401(k)
- IRA
- 証券口座への積立
- 529プラン
- 不動産購入資金
大切なのは、細かい支出をすべて責めることではありません。毎月の手取り収入から支出を引いたあとに、いくら残っているのかを把握することです。
毎月黒字であれば、その一部を自動的に貯金や投資へ回せます。赤字であれば、投資を始める前に、赤字が一時的なものなのか、家計の構造そのものに原因があるのかを確認する必要があります。
2.現在持っている資産と負債
次に、家庭全体の資産と負債を一覧にします。
資産に含めるもの
- Checking Account
- Savings Account
- CD
- 401(k)
- IRA、Roth IRA
- HSA
- 証券口座
- 529プラン
- 自宅や投資物件の現在価値
- その他、売却可能な資産
負債に含めるもの
- クレジットカード残高
- 自動車ローン
- 学生ローン
- 住宅ローン
- HELOC
- 個人ローン
- その他の借入
資産の合計から負債の合計を引いた金額が、現在の純資産です。
純資産=資産の合計-負債の合計
たとえば、現金と投資口座と住宅価値を合わせて50万ドルあり、住宅ローンなどの負債が35万ドルある場合、純資産は15万ドルです。
純資産が思ったより少なくても、落ち込む必要はありません。ここでの目的は、自分を評価することではなく、現在地を確認することです。
毎月の家計と純資産を記録していくと、「収入は増えたのに資産が増えていない」「住宅ローンは減っているが現金が少ない」など、家庭のお金の特徴が見えてきます。実際に記録を続けるとどう見えるのかは、Project $1M™ で公開しています。
3.緊急資金
投資を始める前に、急な出費に対応できる現金があるかを確認します。緊急資金とは、次のような予定外の出来事に備えるためのお金です。
- 失業や収入減少
- 医療費
- 車の修理
- 自宅の修繕
- 家族の緊急事態
- 急な引っ越し
米国消費者金融保護局は、緊急資金を「予定外の支出や金銭的緊急事態のために確保しておく現金」と説明しています。必要な金額は、雇用の安定性、家族構成、保険、住宅の状態などによって異なります。
最初から生活費の6か月分を用意できなくても構いません。まずは、次のように段階を分けて準備すると進めやすくなります。
- 最初の1,000ドル
- 生活費1か月分
- 生活費3か月分
- 必要に応じて生活費6か月分以上
緊急資金は、株価が下がったときに売却しなくて済むようにするための防波堤でもあります。すぐに使う可能性があるお金は、値動きの大きな投資商品ではなく、アクセスしやすい預金口座などで管理するのが基本です。
FDIC加盟銀行の対象預金は、原則として預金者1人・1銀行・所有区分ごとに少なくとも25万ドルまで保護されます。
4.これから必要になる大きなお金
資産形成は、老後資金だけを準備することではありません。家庭によっては、今後10年間に次のような大きな支出が発生します。
- 自宅購入の頭金
- 住宅のリフォーム
- 車の買い替え
- 出産や育児
- 子どもの大学費用
- 日本への帰省
- 親の介護
- 起業資金
- 投資用不動産の購入
- リタイアメント
それぞれについて、次の3点を書き出してみましょう。
- 何のためのお金か
- いつまでに必要か
- おおよそ、いくら必要か
たとえば、3年後に10万ドルの住宅頭金を準備したい場合、現在の貯金額から逆算して、毎月いくら積み立てる必要があるかを計算できます。
ただし、目標額そのものが動くこともあります。貯めているあいだに住宅価格のほうが先に上がってしまうケースです。その状況に直面したときの記録を、「貯金は増えた。それでも、家は遠ざかっていった。」に残しています。
一方、20年以上先に使う老後資金であれば、短期間で使うお金とは異なる方法で運用を考えられます。お金を使う時期によって、貯金に置くべきか、投資に回せるかが変わるのです。
5.家族として何を優先したいか
最後に整理したいのは、家族の価値観です。同じ年収の家庭でも、お金の使い方や目標は異なります。
- 安心できる自宅を買いたい
- 子どもの教育にお金を使いたい
- 早く仕事を辞められる状態を作りたい
- 日本とアメリカを行き来したい
- 投資用不動産を増やしたい
- 事業を始めたい
- 親への支援が必要
- 家族旅行を大切にしたい
すべてを同時に最大化することは、簡単ではありません。だからこそ、「何を諦めるか」ではなく、「今は何を優先するか」を家族で決めることが重要です。
夫婦で話す場合は、最初から細かい予算を決めるよりも、次の質問から始めてみてください。
- 5年後、どのような生活をしていたい?
- お金について、今一番不安なことは何?
- これだけは実現したいと思うことは何?
- 収入が増えたら、何に使いたい?
- 毎月いくらなら、無理なく将来のために回せそう?
夫婦のお金に対する考え方が完全に一致する必要はありません。違いを知ったうえで、共通の目標を一つ決めることが第一歩です。
最初にやることは「投資商品を選ぶこと」ではない
アメリカには、401(k)、IRA、HSA、529プラン、証券口座、不動産など、資産形成に使える多くの選択肢があります。しかし、現在地が分からないまま商品だけを選ぶと、お金の目的と運用方法が合わなくなることがあります。
まずは次の5つを整理してみましょう。
- 毎月のお金の流れ
- 現在の資産と負債
- 緊急資金
- これから必要になる大きなお金
- 家族としての優先順位
一度に完璧な家計表を作る必要はありません。今日できる最初の行動は、銀行口座、投資口座、ローンの残高を一か所に書き出すことです。
数字が見えるようになると、「何となく不安」だった状態から、「次に何をすればよいかを考えられる状態」へ変わります。それが、資産形成の本当のスタートです。
未来資産ラボでは、普通の共働き家庭がアメリカで資産を動かしていく過程を、Project $1M™ として実際に記録しています。何を選び、何を選ばなかったか。うまくいかなかったことも含めて公開しています。
※この記事は一般的な教育・情報提供を目的としたものであり、個別の投資・税務・法律上の助言ではありません。内容は執筆時点の情報に基づいており、制度や税制は変更される可能性があります。不動産の収益性や適切な資金配分は、地域、市場、借入条件、家庭の状況によって異なります。ご自身の状況に当てはめる際は、必要に応じて資格を持つ専門家へご相談ください。
